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経済研究所

研究活動

経済研究所では、所員を中心に、「歴史」と「現状分析」という2つの視点から共同研究(プロジェクト)を進めています。2014年度より、3つ目の研究プロジェクトを新たに設置いたしました。
プロジェクトでは、所員による研究会や学外の専門家を招いてのミニ・シンポジウムを開催しています。

第1部プロジェクト

研究テーマ:「グローバルヒストリーの「資料」と「手法」—グローバルヒストリー再考(3)」(2024-2026年度)

【研究の目的】
 第一部プロジェクトでは,これまで,「グローバルヒストリー再考」というテーマを設定し,研究をすすめてきた。その中では、グローバル化によって進展する共通化・普遍化の中で、分断されながら再構成されていく文明の諸相を明らかにするとともに、世界の社会経済的事象を「対立」と「結びつき」の相互関係の視点から検討することに取り組んできた。これまでの研究活動により、世界の多様性を認めつつ,一つに「収斂」されていこうとする世界のあり方を根本から問い直し、国民国家を単位として「対立」し合ってきた世界が,どのように再構成されていくのかについて,新たな展望が示されたと言っても過言ではなかろう。2019年より全世界に広がったコロナウイルス感染症は,国境の枠組みを越えた活動に大きな制限をもたらし,「グローバル化」が存立する前提そのものが揺るがされている。その中で、「グローバルヒストリー」を問い直すことは、大きな意義を持っていると言えよう。
 本プロジェクトは、個々の研究が特定の地域を対象としたものでありながらも、他の地域との経済的・社会的・文化的な、グローバルな結びつきや、相互対立という関係をあぶり出すことを目的としてきた。これまでのプロジェクトですでに提起されているように、「グローバルヒストリー」は、金融・財政・経済思想・宗教・環境など、多くの研究分野・領域の複合体であると言える。これら分野・領域は、相互に連関し、対立し、結びつきながら展開していくことは言を俟たない。他方、これら分野・領域の方法論について様々な議論が展開される一方で、これらの議論がいかなる「資料」に基づいて、どのような「手法」によってなされるのかについて検討する機会は少ないであろう。
 そこで、第一部プロジェクトでは、こうした研究が、文字文献およびそれ以外の広範な歴史資料を採用することによってさらに進化させることが可能であろうこと、さらには、そうした歴史資料がこれまでにない新たな手法による歴史研究を可能とするのではないかという問題意識を出発点として、「グローバルヒストリーの「資料」と「手法」」というテーマを設定し,「グローバルヒストリー」の方法の原点を探ることで、これまで掲げてきた「グローバルヒストリー再考」プロジェクトの集大成としたい。

【研究の進め方】
 本プロジェクトでは、グローバルヒストリー研究がいかなる「資料」に拠って立ち、どのような「手法」によって進められるのか、という問題意識の下、各研究者が研究を進めていくことを想定している。具体的には、以下の四つの具体的なアプローチが、継続的に設定される。
 第一に、金融と財政からの考察である。国家と商人は金融財政面で協力し、または対立して、財政貨幣や国際的決済手段の創造を通じて資金循環の構築に関与してきた。ここでは、17・18世紀オランダ・イギリスないしは江戸期から現代の日本に焦点をあてて、貨幣・決済システムを通じた国家と商人(市場)の関係と、政府間(国と地方、連邦と州など)での税財政システムの模索について再考する。
 第二に、社会経済思想とその受容からの分析である。18世紀末のイギリスの支配構造は,自由・平等・博愛を掲げたフランス革命,さらにインドから巨富を持ち込んだネイボブの支配層への食い込みによって大きな衝撃を受けた。ここでは,まず植民地インドと隣国フランスからの影響に共通の禍害を見出すエドマンド・バークと、18世紀アイルランドのリネン業の発展をイギリスやアイルランドの支配層が推進した思想的背景の視点から、帝国の危機を考察する。また、20世紀末の「ポストモダン」思想が、フランスの哲学者など西欧の知識人がヨーロッパ近代社会の活力低下を「大きな物語の終焉」として表現する一方、21世紀の現在、中国の覇権の拡張による世界社会のはるかに「大きな物語」が展開していることを踏まえ、それにともなう、近代的価値観、政治思想、経済体制、インフラ整備、国際機関、文化創出におよぶ巨大な変動に即した社会経済思想についても考究していく。
 第三に、宗教活動からの分析である。古くから国家の枠組みを越えた社会経済活動を行ってきた宗教活動は、国民国家間を結びつける典型例として捉えることができる。ここでは、特にキリスト教・仏教の宣教ミッションが、どのような資料を生み出し、ここからどのような歴史像を見いだすことができるかについて、具体的事例を通して検討していく。
 第四に、環境や資源利用の面からの分析である。ここでは木材・森林をとりあげる。木材はグローバル貿易の対象物として古くから取り扱われ、その産地である森林も国境を越えた開発と貿易のターゲットとされてきた。ここでは、近代日本を事例に、そのための学知や林業技術人材の「移動」と「交流」に着目し、近代林学の「普遍化」とそれを相対化する「現地化(土着化)」の双方について検討する。また学知や人材の交流の中で作られつつも、これまで参照されてこなかった歴史的資料の意義についても提起を行う。
 第1プロジェクトは、2021~2023年度にかけて「グローバルヒストリー再考」をテーマに、プロジェクト・メンバーが自らの研究をミニ・シンポで報告するとともに、プロジェクトに属していない多くの方々のご参加もいただきながら活発な議論を展開し、研究を多方面から深めることができた。本プロジェクトにおいても、メンバーによる調査・報告・研究成果公表の機会をできるだけ多く確保するとともに、学外からの研究者もミニ・シンポにお呼びして、研究交流を深めていく予定である。

プロジェクト・メンバー(5名)

青木 健(リーダー)
竹田 泉
立川 潔
花井 清人
林 幸司

第2部プロジェクト

研究テーマ:「不確実性・不透明性増す時代におけるわが国経済システム改革のあり方」(2026~2028年度)

【研究の目的】
 わが国の経済はこれまで、リーマンショックやコロナ禍など、国内外の環境変化が急激に生じる局面に繰り返し直面してきた。こうしたショックは、単に景気循環の変動にとどまらず、企業の投資判断、家計の消費行動、産業構造の再編、さらには地域経済の持続性に至るまで、多層的な影響を及ぼしてきた。また、昨年のトランプ政権による関税政策や、イラン情勢の緊迫化に伴う原油価格の高騰など、国際政治・経済の不確実性は、企業のサプライチェーン管理や原材料調達コスト、価格設定行動に直接的な影響を与え、経済主体の意思決定に新たな制約をもたらしている。
 本研究プロジェクトは、このように不確実性・不透明性が高まる環境下で、わが国の経済システムが抱える制度的・構造的課題を総合的に明らかにし、持続的な成長と社会的安定を両立させるための改革の方向性を提示することを目的とする。より具体的には、少子高齢化社会やデジタル経済の到来が本格化するなか、長期的視点に立った経済分析を通じて産業政策(含:中小企業政策)・金融制度・税財政制度などの面での望ましい政策対応のありかたを検討する。そこでは国内外から受ける様々な経済・政治的圧力に場当たり的に政策対処を行うのではなく、少子高齢化、グローバル化、デジタル化の波といった大きな潮流を踏まえた上で経済および社会システムの再構築の可能性を探り、経済活動での生産性の向上や競争力の改善を目指す。こうした原点に立ったシステム改革の可能性を探ることは、経済成長軌道の回復につながり、わが国経済が抱える本質的な課題解決につながる糸口が提供できると考える。
 過去20年間の軌跡を振り返ってみると、日本経済はリーマンショックやコロナ禍などの度重なる経済危機に見舞われるなかでさまざまな政策対応を積み重ねてきた。経済危機と合わせてバブル経済崩壊後の「失われた30年」といったデフレに悩まされる経済成長の足踏みを脱却すべく、政府は成長戦略を掲げることによって潜在的な労働参加率の向上や働き方改革に着手し、企業での労働力不足などへの対応などが図られた。そうした政策運営が続く中で、財政・金融・産業構造での構造改革は進んだのであろうか。財政を見ると、国・地方合わせて1,300兆円を超える水準での財政赤字の累積が残されたままで、今日においても財政の健全化の目標は実現できていない。また、金融面でも、大胆な金融緩和の実施に伴う日本銀行による国債買い入れの増大は、金融システムでの金利機能復活の遅れやバランスシートの面から中央銀行の政策自由度に制約がかかるなど、これまでにない形での政策の硬直性が新たな課題として生まれている。
 こうした短期的な政策対応の課題と合わせて、少子高齢化やデジタル経済化の本格的な到来は、高齢化に伴う社会保障費の増加を通じて財政システムの硬直化に拍車をかけている。また、金融システムにおけるデジタル化の遅れは、迅速な企業活動への資金調達や消費活動を活性化する決済システムの効率性を妨げる大きな障壁となっている。さらに労働力人口の減少は企業の人手不足を加速させ、企業の雇用確保の囲い込みや企業間での人材流動化の遅れをもたらし、結果として競争力の低下という形で産業構造に歪みをもたらしている。こうした財政や金融システムでの硬直化や産業構造での非効率の温存は、日本経済で今後さらに成長路線を進める上での大きな足かせとなっている。
 プロジェクトでは、マクロ・ミクロ経済学、さらには近年政策研究において注目を浴びている行動経済学などの経済理論を踏まえた上で、計量実証分析等を通じて今日的政策対応の可能性や改革のあり方を明らかにする。具体的には財政・金融・産業構造に焦点を当て、内外のショック(経済危機、財政赤字、金利変動など)に対して耐性をもち、経済全体が持続的な成長と信頼を保つことが出来ているのか、効率かつ安定的な金融および税財政システムの構築ができているのか、東京圏や大都市などへの人口、資本、産業の一極集中や地方の過疎化といった地域格差は解消できているのか、さらには日本の企業の大部分を占める中小企業での構造的な課題や制度的な歪みを明らかにすることにより、中小企業の活性化につながる高付加価値化やデジタル化・DX(デジタルトランスフォーメーション)化へ戦略転換ができているのかなどの可能性を探る。

【研究の進め方】
 本研究は3カ年の計画を作成し、研究計画の 1 年目では、過去の経済危機を通じて顕在化した経済政策の課題や、近年の不確実性が高まる経済環境下で新たに顕在化した政策課題について、金融・財政・産業組織の視点から論点整理を行う。研究計画 2 年目では、マクロの経済政策での残された課題と労働・産業分野のミクロ的なシステム分析を通じて明らかにすべき問題の明確化を図る。最終の 3 年目はプロジェクト全体としての研究の総括にあて金融・財政・産業組織等の視点が連携した経済システム分析を進め,日本経済がマクロおよびミクロの双方の視点から抱える問題の解決につながる政策提言を完成させる。

プロジェクト・メンバー(8名)

花井 清人(リーダー)
後藤 康雄
中田 真佐男
新井 学
菊池 悠矢
紺野 由希子
福島 章雄(客員所員)
柿原 智弘(客員所員)

第3部プロジェクト

研究テーマ:「AI時代の企業経営」(2026~2027年度)

【研究の目的】
 情報通信技術(ICT)の技術革新および人工知能(AI)の技術進化を背景に、企業の在り方や企業行動が大きく変化している。本研究「AI時代の企業経営に関する研究」は、今後さらなる高度化が予想されるAI時代における企業経営について、1)経営戦略、2)組織・人材戦略、3)CX戦略、および4)コーポレートガバナンスなどの視点から、理論的実践的に研究することを目的とする。
 「AI時代の企業経営」において中核的課題の第一は、ICTの発展およびAI技術の進化に伴って大きく変化する経営環境の中で、如何に経営戦略を再構築し、それを効果的に展開していくかということである。近年、AI技術の進化によって膨大なデータをリアルタイムで収集・分析し、そこから有益な情報を抽出することが可能となった。
 このようなAIを活用したデータドリブン経営では、数値的な根拠に基づいた客観的な意思決定が可能になる。AIの活用によって、市場動向、顧客の行動履歴、在庫状況、競合の動きなど多岐にわたるデータを一元的に管理・分析し、その結果を基に迅速かつ柔軟に戦略を立案することが可能となった。それは業務効率の向上やリスクの最小化、さらには新たなビジネスチャンスの創出にもつながっている。
 そのため、今後企業が競争力を維持・強化していくためには、データを基盤とした科学的な経営手法へと転換していくことが不可欠である。また、こうした経営戦略の変化とともに、それを実践する企業組織および人材に大きな変革が求められることはいうまでもない。これまでのように特定の知識や技能だけに特化した人材ではなく、AIと共存し活用できる柔軟な能力を持つ人材の開発・育成、配置が今後の鍵となるはずである。
 AI時代において重要視されるのは、デジタルリテラシーである。さらに変化の激しい時代においては、継続的な学習(リスキリングやアップスキリング)も不可欠である。その上、AIの活用を前提とした課題発見力や論理的思考力が求められる。このように、AI時代において必要とされる人材とは、「AIに置き換えられない力」と「AIを最大限に活用できる力」の両方を兼ね備えた人材であると言えよう。
 加えて、ICTおよびAIの導入は、 業務プロセスとオペレーションを根本から変革することによって、生産性の飛躍的向上を実現することは確実である。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とAIを組み合わせた業務自動化はもちろん、定型業務を削減すると同時に創造的業務への時間確保が不可欠なるとともに、人間のミスを減らし、標準化されたプロセスをAIが維持することによって品質の安定化と向上が実現されるはずである。
 他方、AI技術の発展は、顧客体験(Customer Experience:CX)に大きな変革をもたらす。これまで画一的なサービス提供や人手による対応が中心であったCXは、AIが導入された結果、よりパーソナライズされ、リアルタイムでシームレスな体験が可能になった。AIが顧客の購買履歴、行動データ、嗜好情報などを解析し、個々のニーズに最適化されたレコメンデーション(商品・サービスの提案)を実現することによって、顧客は「探す手間」なく、自分に合った商品やサービスに出会うことが可能になり満足度が飛躍的に向上する。また、AIチャットボットや音声アシスタントの導入によって、24時間365日対応が可能となり、問い合わせやサポート対応のスピードと質も向上している。
 今後、AIを活用したCXは単なる利便性の向上にとどまらず、感動や信頼といった感情的価値の提供にまで踏み込むことが求められることから、企業にとっては、テクノロジーと人間らしさのバランスを取りながら、顧客と共に価値を創造していく姿勢がますます重要となる。
 AI時代における企業経営では、これまでみてきたように1)経営戦略、2)組織・人材戦略、3)CX戦略において、未曾有のイノベーションが求められることに加えて、企業倫理や法規制などコーポレートガバナンスの面でも大きな変化が求められるはずである。企業にとって、その技術的な利便性や競争力だけでなく、倫理的責任や法的遵守(コンプライアンス)、そしてガバナンス(統治体制)への対応も極めて重要な経営課題となることは確実である。
 企業はAI開発・運用において、単に効率性や収益性を追求するのではなく、人間の尊厳や基本的人権への配慮を前提としたガイドラインや行動規範を整備する必要があるといえる。また、AIの利用に関する法規制の整備も重要な課題である。たとえば、EUの「AI規則(AI Act)」では、AIをリスクレベルに応じて分類し、高リスクのAIには厳格な要件(説明可能性、監査義務など)を課しているし、日本でも経済産業省などを中心に、AIガバナンスに関する指針や制度が策定されつつある。企業はこれらの国内外の法制度を正確に把握し、法的リスクを回避しながらAIを適正に活用する体制づくりに取り組むことが不可欠である。
 これまでみてきたように、すでに進行しつつあるAI時代の企業経営は、明らかに従前の企業経営とは実務的にも理論的にも異なるものとなる。しかも、そうした経営スタイルは、AI技術のさらなる進化に伴って、より高度且つ複雑なものになることが予想される。本研究では、AI時代の企業経営のエッセンスについて考えていくことにする。

【研究の進め方】
 本研究の目的は、1)経営戦略、2)組織・人材戦略、3)CX戦略、および4)コーポレートガバナンスなどの視座から、AI時代における企業経営について学際的に取り組み研究することである。つまり、本研究は、それぞれの研究者の研究成果と他者の研究成果とを融合し、より高いレベルの共創的研究成果をあげることもねらいとしているからである。
 具体的な研究の進め方は以下の通りを計画している。
 第一に、上記の視座からAIベースの経営についての事例研究の蓄積を進める。
 第二に、AIベースの経営事例を成果指標の点から捉えたときの、経営や管理上の差異の考察を行い、成果指標の促進要因や後退要因に関する仮説を導出する。
 第三に、第二で導出した仮説群の検証を実施する。
 第四に、検証の結果を踏まえ、AI時代の企業経営のエッセンスについて考究を行う。

プロジェクト・メンバー(9名)

相原 章 (リーダー)
上田 晋一
遠藤 達哉
久保田 達也
関 千里
塘 誠
小久保 雄介(客員所員)
都留 信行(客員所員)
松尾 茉子(客員所員)