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2026.02.25
SSS#18 日ASEANラオス調査報告
成城大学スポーツとジェンダー国際平等研究センター(以下、SGE)は、YouTubeチャンネル『Sport for Social Solutions (SSS)』を運営しています。本チャンネルでは、専門家や行政関係者、アスリートなどの幅広いゲストとともに、社会課題解決のプラットフォームとしてのスポーツに光を当て、情報提供や意見交換を行います。
成城大学スポーツとジェンダー平等国際研究センター YouTubeチャンネル:
SSS第18回目のテーマは「日ASEANラオス調査報告」。
ASEAN唯一の内陸国であるラオスは、タイ、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、中国の5つの国に囲まれています。国土の大部分を高原や山岳地帯が占め、約50の民族が独自の言語や文化を守りながら、社会主義体制のもとで暮らしています。この国では、女性の役割やスポーツへの参加はどのように捉えられているのでしょうか。
スポーツ庁委託事業としてSGEが進める「ASEAN-JAPAN Actions on Sport: Gender Equality」では、日本とASEAN11カ国の政府が協力し、スポーツを通じたジェンダー平等の実現を目指しています。その主要な取り組みの一つとして、2023年からは、女性・女児のスポーツ参加をめぐる課題とニーズを把握するための実態調査を進めています。
8カ国目となる調査地はラオス。SGEポスドク研究員の古田映布と、今年秋からSGEに加わったポスドク研究員の髙田侑子が、現地で得た気づきや印象を共有しました。
稼いで家に仕送りをする女性像──安定した職と収入を得る手段としてのスポーツ参加
まず、ラオス調査で特徴的だったのは、女性に期待される役割として「稼いで家族に仕送りをすること」が一般的な女性像として広く共有されていた点です。育児や家事といった、これまでの調査国で見られた性役割についても語られましたが、それ以上に「仕送りをする存在」としての役割が強調されていました。こうした規範は女性のスポーツ参加にも影響を与えており、髙田は、スポーツ参加が収入に繋がらないことがスポーツに参加しない・できない理由とする声も聞かれたと話しました。

同時に、学生がスポーツを続ける理由についても興味深い傾向が見られました。スポーツ経験が防衛省や警察などの政府関係職への就職に有利に働く可能性があるとして、スポーツを安定した職への道として捉える姿勢が共有されたといいます。また、国際大会などトップレベルで競技する学生にとっては、プロとして活躍する未来を目指すのではなく、「今この大会で賞金を得ること」が大きな目標となっていました。髙田は「賞金を家族に仕送りできるという理由で、大会で勝つことを目標にしているのが印象的だった」と振り返りました。
古田はこれを受け、フィリピンなど他の調査国では、プロスポーツ選手として成功し収入を得ることを軸に、スポーツとお金のつながりが語られていたと指摘。一方ラオスでは、政府関係職への就職や、学生時代から賞金を得る手段としてスポーツ参加が捉えられており、こうした点が特徴的で他国との違いが現れていたと指摘しました。
容姿に対する語りの少なさ
続いて髙田は、ラオスで特徴的だった点として「容姿に関する語りの少なさ」を挙げました。スポーツをする理由として、「きれいになるため」「ダイエットのため」といった体型や外見に関する言及が聞かれなかったことに加え、特定のアスリートを好む理由としても、「かっこいい」「かわいい」といった外見を根拠とする語りは見られなかったといいます。これに対し古田は、経済発展の途上にあることから、メディアに触れる機会が比較的少ないことも要因の一つではないかと述べた上で、スマートフォンの普及によって今後変化していく可能性にも言及しました。
ラオスに漂う穏やかさと競争への意識
最後に、現地での印象について問われた古田は、国全体に漂う穏やかな空気と競争意識の少なさに触れました。現地で活動する日本団体関係者から得た話として、ラオスの人々は遠い未来を見据えるのではなく、今日や明日といった“今をどう生きるか”に意識を向ける傾向があるといいます。その上で古田は、「今に集中しているからこそ、ガツガツとした競争心にはつながっていないのかなと感じた」と振り返りました。髙田も、特定のアスリートを好きな理由として、競技力や実績よりも「規律」や「感情のコントロール」といった点が挙げられていたことに触れ、こうした価値観は競争への関心の低さを反映している可能性があると同意しました。

さらに古田は、同じ社会主義国であるベトナムとの比較にも話を広げました。ベトナムではエリートスポーツへの意識がより強い傾向があり、その背景には経済発展の度合いの違いがあるのではないかと示唆します。社会主義体制を維持しつつ、市場経済も導入しているベトナムは、ASEANの中でも名目GDP第5位と比較的高い経済成長を遂げている一方で、ラオスは名目GDP第10位に位置しています。
さらに、ASEAN加盟国全体としても経済発展の進度には差があることを指摘し、「そうした多様な国々が集まり、共同体として互いにノウハウを共有し合っていることがASEANの特徴だと思う」と言及。髙田も、経済、国家体制、宗教などの違いを前提としながら、特定の国が先行し他国が追従する関係ではなく、多方向に知見を持ち寄っている共同体としてのASEANの強さを強調しました。
今回の記事のフル動画はこちらよりご覧いただけます。
これまでの調査国の報告は、以下の記事をご覧ください。
インドネシア、ベトナム、フィリピン、カンボジア、ブルネイ、マレーシア、タイ